読書備忘録

中世の秋 (上巻) (中公文庫)
中世の秋 (下巻) (中公文庫)
作者: ホイジンガ, 堀越孝一
出版社/メーカー: 中央公論新社
発売日: 1976
メディア: 文庫

恥かしながら初読。
中世ヨーロッパ、フランドル、ブルゴーニュとかそこあたりを聞いてイメージが
沸かないような人にはお勧めできません。
歴史といえば政治・経済・軍事史だ!という人にもお勧めできません。

中世ヨーロッパ人の内面を、様々な史料から再構成しようという営為をホイジンガ
はこの本の中で試みています。
エロティックでありロマンティック。信心深くもあり迷信深くもある。
現代人(といっても19世紀前半)の人間からみて理解しがた心性を、ありのままに
把握しようと努めています。
素人なのでよくわりませんが、後のアナール派に繋がる流れでしょうか。

私が読んで、興味を持ったのは同じ時代に作られた文化である詩と絵画であるにも
関わらず、我々は同じように感動できないということ。
たしかに、中世に作られた物語は読んでいて、翻訳の問題もあるでしょうがいった
いどこが面白いか分からなくとも、絵画はに感動することはできます。
ジャンルは違いますが、ベートベンの歓喜の歌なんかも歌詞を読むのとその音を聞く
ので大違いです。

良い本ではありますが、薦められる人間は少ないという本です。

評価A