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- 作者: 山崎幹夫
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/05
- メディア: 単行本
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例の事件以降この手の本から手を引いていたようですが後書きに
毒に関する何冊かの本を書いたために、僕は、本当は毒を薬の素材として研究し、ついでに毒の文化史に興味をもつまじめな薬学者であるのに、毒を自在にあやつるその道の専門家のように思われ、事件が起こる度に夜中の電話に起こされたり、会議の最中に呼び出されたりするなど、マスコミの取材につき合わされて、ずいぶんと迷惑を受けた。それで、もう毒の本は書くまいと一旦は決心して、資料の数々もまとめて処分したのではあったが、角川書店のの宮山さんと陸田さんの薦めにのって、また、この本が刊行されることになった。言い訳をするつもりはないが、その心境の変化を少しばかり大げさに言うと、自分自身が「毒の文化」をもう一度考えるためにも、毒に出会ったために歴史に残った人たち、歴史を変えた毒について見なおす機会をもつことは無駄にならないと考えたからである。
とあるので今後の著作活動に期待しまつ。
科学者という者に対して一般人が抱く固定観念とはかなりの偏見だと、その文章で分かります。モーツァルトの話の前に子供の頃、レコードで聞いたはなしやら、その他少々下品な学生時代の話などなど。あとは駅の飛び込み自殺で往生したことがあるのでお勧めはしないが、なるべく人に迷惑をかけないように死ぬなら一人で自分の部屋で毒を用いるほうがまだましだとか。他にも伝統的な蛇毒への対処法がある一定の合理性を含みつつも、呪術的な要素が強くなると、もうここまでくるとわけが分からないとまなど。
思わず笑ってしまったのは143頁の
ところで、突然の話だが、あるとき、女性からの毒薬攻めに男たちが対抗する方法ははたしてあるのかという、重要なテーマについてのシンポジウムが、新宿のゴールデン街で例によってよっぱらいの集まりの中で行われたことがあった。ある出版社の編集者は、「盛られる前にもるっきゃない」と叫んだ。ある音楽家は「解毒剤だ!」といいつつ僕のほうを振り返ったが、僕の絶望的な表情を見てとるや、あとはやたらとバーボンのグラスをあおり続けるばかりであった
というくだり。冗談のどこが面白いかの説明は無粋なのでしませんが、実はシンポジウムの原義からすると誤用ではありません。
と引用が多くなりましたが、毒に興味を持つ人にはかなりお勧めの本です。
もっともこれ、実は昭和62年に出版された『人、毒に会う』をもとに修正、加筆、削除したものですが、高校時代にそれを読んだ私でも十分楽しめましたし加筆部分だけでも値段分の価値はあると思います。
評価S