読書備忘録

毒薬の誕生 (角川選書)
山崎幹夫
出版社: 角川書店
発売日: 1995/11

面白い本です。内容は毒薬とかいってる割には、アルコールやらカフェイン、ニコチンやらの話が半分くらい占めてます。

この手の経歴の人にありがちな歴史的知識の欠如も、クレオパトラにとってギリシア語が外国語とか、古代ローマの鉛の水道管の話以外はそれといって感じられませんでした。コーヒーのイギリスにおける流行を産業革命と結びつけちゃってるのも難ですが、まあこのあたりは許容範囲ない。

かなりの数の毒にまつろう文献を推理小説から古典の原典あるいは最近の著作など色々紹介していますが、まとめて書誌情報を載せてないのも不満といえば不満ですが、一般向けなのでわざとそうしているのでしょう。

麻薬も薬学的な定義というより法律的定義であるとか、青酸カリがどういう薬物かなどの説明も化学者ならではのものです。
またタリウムに触れてるところでは、自分の著作の影響でそのような事件が起きたのではないかと心配してるくだりなどもあります。
研究室を訪れた作家に亜砒酸を見せるくだりや、松本サリン事件の際専門家の一人としてインタビューを受けたくだりはこの著者ならではで読み応えがあります。

評価 B