「大岡裁き」の法意識 西洋法と日本人 (光文社新書)

「大岡裁き」の法意識 西洋法と日本人 (光文社新書)

そもそも法学部で教鞭をとっている著者自身にとっても裁判は身近な存在ではない、という所から出発して日本人の法意識についての本です。

まず初めに現代の日本法の基礎となる明治時代にさかのぼり、ある一人の法学者の人生や写真を元に日本の西洋法受容について分析し、あとは明治維新直後からの明治期の刑事裁判で実際被告、検察、裁判官がどのような配置なのかという見下ろし図をもとに法意識の変遷を論述していくという一風変わった手法で書かれています。
明治の初期には法学とはお雇い外国人が、その母国語で教授し問題も当該言語だとか、そもそも今でいう東大法学部の卒業者が一桁とか今とは隔世の感があります。
また後の方で、日本人の法意識を語る上ではずせない著作を論評したり、交通事故などで司法を利用しないのはある意味合理的な選択ではないか?と外国人の研究を紹介したりしています。個人的にヒットだったのは明治期に東京で行われた今でいう司法試験が法律物知りクイズみたいなもので試験を受けた人間の抗議で中止になったり、あとは「個人責任」はそもそも日本の民法刑法が予定する所であるのになぜ今格別言われるのか?あるいはインターネット上で「個人責任」という言葉はその言葉を発する者の個人責任を回避されるために使われるケースが圧倒的に多いなどという他の研究者の紹介など。

法律について興味があるなら読んでおいてもいいと思います。

評価A