おべんきょう

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調べによると、両容疑者は11日夕、同店内で、漫画本1冊(約100円相当)を万引きした飲食店店員の男に注意したところ殴りかかるなど暴れたため、男を羽交い締めにして押し倒し、首を絞めたり腹をけったりした疑い。男は病院に運ばれたが18日朝に死亡した。

あくまでも新聞記事ならびにその記事から推測できることのみで語ります。

そもそも、第一の問題は本当に窃盗を死亡した男性はやっていたのか?「同店内」という表現が気になります。店外ならともかく、店内で窃盗が成立するかは微妙です。ただhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070918-00000064-jij-soci

男についても、容疑者死亡のまま、事後強盗容疑で書類送検する方針。

とあるので、この点はよくわかりません。ただ本をとり、鞄の中に入れるなどしていたら着手に関しては認められると思うので窃盗未遂とはいえると思います。
ついで事後強盗に関して。窃盗が盗んだものを取り返されたり逮捕されるのを免れようと暴行を働くと懲役5年以上の強盗となっちゃいます。なおこの場合は窃盗行為が既遂でなく未遂でも同じです。怪我させてら6年以上で無期まであります。万引きなどと軽く考えないでくださいね。
さーてメインディッシュの正当防衛の成立の可否。小学生でも知ってる正当防衛ですが、その成立の可否に関しては皆さんしらないことが多いです。

(正当防衛)第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

まず急迫性に関して。「羽交い締めにして押し倒し」あたりまでは抵抗する窃盗への制圧として急迫性は肯定できるでしょうが、「首を絞めたり腹をけったりした」は微妙です。すでに抵抗する能力もしくは意思またはその両方をなくしているものへの暴行なら、そもそも急迫性が否定され正当防衛はもとより2項の過剰防衛さえ成立する余地がありません。
では、抵抗が継続していたとして急迫性は肯定できるとします。しかし、「首を絞めたり腹をけったりした」はやり過ぎです。これは生命への侵害となりうる行為で、「やむを得ずにした行為」に求められる相当性を欠くと思われます。
よって、よくて過剰防衛、悪ければ過剰防衛さえも成立しないと考えられます。
まあ、結局は検察が起訴するかどうかですが、起訴されたら正当防衛はまず成立せずよくて過剰防衛と情状により減刑で執行猶予がつくかどうか、かと。

正当防衛は、実はその要件がかなり厳しく裁判では簡単に認められないと思ってください。

前日はもっと判例やらも引用しましたが、めんどうなので省略。